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宝くじに当たると不幸になる?
当選者のその後と破産率

「宝くじに当たった人は不幸になる」「当選者の7割が破産する」。よく聞く話ですが、大きな研究で当選者のその後を調べると、当たった人の生活の満足度は上がって、10年以上たっても下がっていませんでした。「7割が破産」は、出どころをたどると調査の数字ではありませんでした。

先に結論

不幸になる? 大きな研究では、なっていません。生活の満足度は上がり、長く続きます。ただ、毎日の気分が明るくなるとまでは言えません。

7割が破産する? 根拠のない数字です。名前を出された団体が、自分たちの調査ではないと発表しています。

お金で破産は防げる? 数百万〜1千万円台の当選では、破産が数年先に延びるだけ、という研究があります。

当選者のその後:3,362人を最長22年追った研究(スウェーデン)

スウェーデンの経済学者たちが、くじの当選者など3,362人に、当選から5〜22年たってから調査しました。賞金の合計は2億7,700万ドルです。

この研究は、当たった額がくじで決まっているところを使っています。同じくじを買った人どうしで、たまたま大きく当たった人と小さく当たった人を比べるので、「もともとの性格や暮らし」の違いが入りにくくなります。どう分析するかも、データを見る前に登録していました。

分かったこと:

・人生の満足度は上がる。10年以上たっても下がらない
・満足度が上がる主な理由は、お金の心配が減ったこと
・幸福感や心の健康への効果はもっと小さく、ゼロと区別できない
・税引き後10万ドル(約1,500万円)で、満足度が0.037標準偏差上がる。小さめの効果

まとめると、当たっても不幸にはならない。暮らしの満足は上がるが、毎日がずっと楽しくなるわけではない、という結果です。

根拠:一次資料(Lindqvist, Östling, Cesarini「Long-run Effects of Lottery Wealth on Psychological Well-being」IFN Working Paper No.1220、2018年。のちに Review of Economic Studies 2020年に掲載)。円の金額は1ドル150円で換算した目安です。

「当たっても幸せにならない」の元になった古い研究

よく引用されるのは、1978年のアメリカの研究です。宝くじの当選者22人と、当たっていない22人を1回だけ比べて、「当選者は特に幸せではなかった」としました。

ただ、人数が少なく、当たる前の幸せの度合いも測っていません。上のスウェーデンの研究は、人数が150倍以上で、当たった額がくじで決まるところを使っています。どちらを重く見るかと言えば、後の研究です。

根拠:二次(Brickman ほか 1978年の研究の紹介と、その批判)。「よく聞く話の元はたいていこれ」は推測です。

「当選者の7割が破産」はどこから来たか

この数字は、アメリカの全米金融教育基金(NEFE)の調査として、たくさんの記事に引用されてきました。

ところがNEFEは、2018年1月に「この数字はNEFEの研究ではなく、NEFEとして確かめることもできない」と発表しています。2001年にNEFEが開いた専門家の会議で、参加者の1人が言ったものらしい、とのことです。NEFEは「当選金と破産についての数字は出せない」とも書いています。

つまり「7割」は、会議での1人の発言が、調査の数字のように広まったものです。

根拠:一次資料(NEFE「Research Statistic on Financial Windfalls and Bankruptcy」2018年1月12日)

当選者の破産率:当たっても数年先に延びるだけ(アメリカ・フロリダ州)

フロリダ州のくじ「ファンタジー5」の当選者を、破産の記録と照らし合わせた研究があります。1993〜2002年の当選者で、初めて当たった人だけを数えています。

5万〜15万ドル(約750万〜2,250万円)当たった人は、当選から2年は破産が少ないものの、3〜5年目に増えて、5年でならすと少額の当選者とほとんど同じになりました。研究者は「大きなお金は破産を防がず、先に延ばすだけ」とまとめています。

当たった額2年以内5年以内
1,000ドル未満2.99%5.46%
1,000〜1万ドル3.22%6.27%
1万〜2.5万ドル1.48%5.13%
2.5万〜5万ドル1.49%5.24%
5万〜10万ドル1.03%5.45%
10万〜15万ドル0.68%4.08%
全体(約3.5万人)2.16%5.53%

5年以内に破産した人は、全体で約5.5%。「7割」とは桁が違います。1年あたりにすると約1%で、フロリダの大人全体(1.0%)と同じくらいでした。

気をつけたいのは、この研究の当選額は最高15万ドルで、日本のジャンボの億単位とは額がまったく違うことです。10万〜15万ドルの人は147人しかおらず、数字のぶれも大きめです。

根拠:一次資料(Hankins, Hoekstra, Skiba「The Ticket to Easy Street? The Financial Consequences of Winning the Lottery」Review of Economics and Statistics 2011年、表1)。円の金額は1ドル150円の目安。「日本の億単位とは額が違う」の比べ方は書き手の考えです。

宝くじで不幸になった人の話ばかり耳に入るのはなぜ?

「当たって何年かで全部使い切った」「家族とけんかになった」という話は、記事になりやすく、よく広まります。一方で、「当たって、ふつうに暮らしている」人は話題になりません。

目立つ1人の話だけを集めると、全体の姿とずれます。当たった人の中から「神棚に置いていた人」だけを数えてしまう話と、形は同じです(神棚と生存バイアス)。不幸になった人の話は、何千人のうちの1人かもしれません。

根拠:推測(話の広まり方についての書き手の考え)。全体の数字は上の2つの研究です。

日本では:高額当選者に渡される冊子

日本では、1,000万円以上の当選者に、みずほ銀行が『【その日】から読む本 突然の幸運に戸惑わないために』という冊子を渡していると報じられています。当たった直後の気持ちの揺れ、誰に知らせるか、お金の使い道などが書かれているそうです。

「当たると不幸になる」というより、「急な大金には備えがいる」という考え方です。上のフロリダの研究とも合っています。

根拠:二次(マネーポストWEB、J-CASTニュースなどの報道。冊子そのものは見ていません)。日本の当選者のその後を調べた大きな研究は、このページを書くときに探した範囲では見つかっていません。

よくある疑問

宝くじの高額当選者は、その後どうなる?
スウェーデンの研究では、生活の満足度が上がって、10年以上たっても続いていました。破産する人もいますが、アメリカの研究では5年以内の破産率が約5.5%で、少額の当選者と同じくらいです。

日本の当選者のその後は分かっている?
日本の当選者のその後を調べた大きな研究は、このページを書くときに探した範囲では見つかっていません。みずほ銀行が1,000万円以上の当選者に、当たった直後の気持ちの揺れやお金の使い道などが書かれた冊子を渡している、と報じられています。

「当選者の7割が破産」は本当?
根拠がありません。数字の出どころとされた全米金融教育基金(NEFE)が、2018年に「うちの研究ではない」と発表しています。

お金で幸せは買える?
この研究の範囲では、「暮らしへの満足」は買えて、「毎日の気分」はあまり変わらない、という結果でした。

1億円当たる確率はどれくらい?
2026年のハロウィンジャンボで、1億円以上は200万分の1です。毎年10枚買うと、半分の人が当たるまで約13.9万年かかります(1億円当たるまで何年)。

根拠:上の各研究とNEFEの発表(一次資料)。日本の冊子は報道(二次)。確率は宝くじ公式サイトの当選金表から計算。

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